DESIGN CAFE スガワラデザイン室 HOME > プロジェクト > 家の具 > 桐の進化

家の具 家具(文化デザイン)

桐の進化

桐材は、箪笥・小箱・琴・下駄等に使われ、数々の日本の文化をつくった素材の一つです。 しかし、現在これらの物を使用することは大変少なくなりました。
物が生産され、商品となる時点で、ものには様々なイメージが付加されます。 そして、それを使用する過程や情報としてメディアに取り上げられる過程においても、物本来の意味とは全く違う意味も付加されていきます。
日本の風土に合い、愛されてきた桐も、いつの間
にか、桐本来の性質とはかけ離れた意味が広まっているのも事実です。 今の日本の生活を見つめ直し、桐本来の性質を再認識することが、日本の文化を再生する試みとなり、桐の進化の第一歩となりそうです。

桐は軽く柔らかい

桐材の比重は、国産樹種の中で最も小さく、0.2〜0.3程度です。桐は、導管17.8%、繊維41.2%、柔組織36.9%、放射組織4.1%と、木の硬さに大きく影響する繊維と柔組織が78%を占めています。その上、繊維、柔組織とも細胞の膜が薄いため、細胞腔が大きく、軽く、柔らかい木材です。 このため、桐製品は、切削等の加工が容易で、持ち運びや取り扱いが便利と言われています。しかし、実際は切削時のささくれ等により、加工には修練と技術を要し、また軽く、持ち運びは容易ですが、反面、衝撃に弱く丁寧に取り扱わなければならない製品となっています。

桐は成長が早い

「木」と「同」と書くように、桐はナラやタモ等のような木材ではなく、農林水産省の分類では、ゴマの葉草科の桐とされ、ゼンマイやキノコと同分類になるそうです。木材のように数百年ではなく、草木のように数十年で成長し、活用することができます。 かつては、女児が誕生すると桐を植え、結婚するときにその桐を使って家具調度品を用意した程です。

桐は収縮率が少ない

一般に収縮率と比重とは相関関係にあり、比重が小さいほど収縮率も小さく、乾燥した桐は、他の木材と比べて約1/3程度の収縮率です。収縮率が小さいと狂いや割れが少なく、精密な加工が可能になります。そのため、日本では、桐材を箪笥に使用し、引き出しの隙間を限りなく小さくし、箪笥内部は、外気を遮断し温度や湿度の影響を受けにくくすることができました。内部の湿度は一定に保たれます。

桐は吸湿、吸水性が低い

桐の導管の中では、チロースと呼ばれる空胞のようなものがあり、これが水の通りを妨げています。また、木が生きている時に繊維などの細胞同士のつながりの役目をもつ膜の孔が小さいことで、一度乾燥してしまうと容易に水分が中に入っていきません。このように防湿性に富むということは収納家具として重要な要素です。 ただし吸湿と吸水とは違い、吸湿は空気中の湿気を吸うことですが、吸水は水の中に浸した場合のことで、吸水の場合は最初はたしかに水を吸いにくいが、時間が経てば、中が孔だらけなだけに、スポンジのようにたっぷりと水を含んでしまいます。

桐は熱伝導率が低い

乾燥してしまうと細胞の内部は、乾いた空気に満たされるため、熱が伝わりにくく、そのため、昔は、火鉢にも使用されました。

虫がつきにくい

桐材の引き出し成分の中には、虫を寄せ付けない成分が含まれています。また、防腐力の大きいタンニンも含まれており、腐りにくい木材です。

音響性に優れている

多孔質で、粘性に富むため、音響効果に優れています。日本では、古くから琴に使用されています。

桐の輸入

桐は成長が早いため、枝が四方にすぐ張ってしまいます。また根本に虫がつきやすいため、人間が手をかけなければ(枝を切ったり、虫を取ったり)成長できません。昔から山師と呼ばれる人々によって桐を管理してきましたが、最近では山師も極端に減り、日本で桐ができにくくなっています。このため、米国や中国からの輸入が増えています。

桐は環境にやさしい

今、日本は東南アジアをはじめ、世界中の木材資源を食いつぶしているという非難をあびることがあります。その点からいって、桐ほどすぐれた木材はありません。 極端な乾燥地、排水不良地、アルカリ性の土地でないかぎり、かなり痩せた土地でも栽培することができるという特徴を持っています。ことに農作物にとっては不毛な、礫質土壌とか砂礫層の混ざる土地や造林不成績地といわれる洪積層の丘陵地などか桐の適地です。 したがって自然破壊もしないし、木材資源としては成長が早いので、エンドレスです。

桐は火に強い?

火事にあってもタンスだけは残ったとか、極端になると火事の時、桐の立木が水を吹き出して火を消したなどという人もいます。 燃える燃えないということの科学的指標として着火点、発火点がありますが、桐の着火点は269℃、発火点425℃です。一般によく使われる50種の樹種のうち、着火点の最低はカヤで225℃。最高はタブノキで380℃、平均でも263℃ですから、桐はほぼ平均です。発火点は最低がドロノキで352℃、最高はアカマツで485℃、平均は435℃ですから、桐は平均よりやや低い。つまり桐はどちらかというと燃えやすい木だということになります。住宅用材料の杉は着火点240℃、発火点435℃と比較すると、桐は杉よりやや燃えやすい木材です。 たしかに火事の際、桐箪笥にじゃぶじゃぶに水を掛けておくと、タンスが水を吸うため燃えにくいということはあるようです。周りは焦げても、中までは燃えないとか。しかしこれは桐が燃えないのではなく、吸水量が多いためで、それが混同されているのです。

※画像をクリックすると拡大します。

  • image
  • image
  • image
  • image
  • image
  • image
  • image
Page Top
copyright © 2009 SUGAWARA DESIGN ROOM all rights reserved.
フォントを小さく フォントを標準に フォントを大きく