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カフェコラム

市場感性…ミニマムデザイン

商品をデザイン開発しようとする時、まず流行っている他の商品を見て回ります。いわゆる市場調査から入ります。その中で、自分が興味をもったもの、これからも流行が続くだろうと思えるもの、次に展開しそうなものを分析していきます。しかし、この市場調査から次のヒントをつかむのは困難を要します。例えば、新しい家具をデザインしようとする時、家具売り場や家具ショップを見て回るだけで、市場調査を終えた感覚になります。これでは、次の商品を探り出すことは難しいでしょう。
新しい商品の探り方を具体例を挙げて考えていきたいと思います。
現在、雑貨発祥の地として知られる東京の自由ケ丘に和の雑貨店が増え始めています。数年前から和風の家具は、二十代から三十代の女性に人気があります。四十代以降には、懐古主義としても根強く人気があるでしょう。人気があると言った理由は、そのターゲット層の雑誌で多く取り上げられていることが一つです。
このことから「和」が、これからも流行ると思うのは、間違いではないにせよ、肝心な事を見落としていそうです。デザイン思想としての波と時代背景、そして生活を照らし合わせて、市場というものを見つめていないからです。
街を歩いている若者やカップルを見ると、ウォーキングシューズにTシャツといった、家庭で洗濯できる素材で、動きやすく、汗を吸う素材のファッションが目につきます。またショルダーバックの肩ひもは、より機能的になってきています。これが今のファションの特徴の一つです。
不景気から、安価で実生活に対して機能的なデザインが多くあることに気付くでしょう。ここで、和を照らし合わせてみると、和というものも生活スタイルからくる機能的なものが数々あります。和のデザインは、使用するという最低限の機能が大事な要素であり、ここが若者のファッションと共通しています。和の代表的な空間としての茶室は、最低限の空間で、わび、さびの世界を表現しています。
今の流行は和ということだけではなく、最低限という意味の「ミニマムデザインと日本のくらし」と市場から読むことができます。この日本のくらしというのは、和と洋を経験して、すでに洋が普通の生活となってしまった中で、日本らしいところを見つめ直すことを意味しています。
素材感のある商品もミニマムデザインの一つです。

スガワラデザイン室 菅原孝則

2001年11月1日 法務省矯正局作業課発行 アプローチvol.36

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