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カフェコラム

家具デザインの変革

ここ数年で家具デザインが、大きく変わろうとしています。国内家具メーカーは、苦戦をしいられ、従来からの家具問屋中心の商品流通が、崩れてきています。デパートの家具売り場は、大幅に縮小したり、小物中心の売り場に変わったりと、売る側の環境も大きく変化しています。
原因の本質は、国内家具メーカーの家具と、イタリアン・モダン家具類やアンティーク中古家具、あるいは、文具としての箱までが、消費者の視線では、同一レベルになったことと考えられます。
その理由として、今までイタリアン・モダン家具は高価で、その専門店に行かなければ見れなかったのが、円高等の影響で安くなり、国内家具メーカーの家具と同一レベルで、一般家具店でも見れるようになった。さらには、雑誌やテレビ等のメディアを通じて、全ての家具が、消費者の目に止るようになった。つまり私達の感性の中で、家具を経験するということは、メディアの中の家具を通じての経験が大部分であり、単なる消費記号として経験してるに過ぎないからであろう。
多くの国内家具メーカーは、メーカーとしてのブランド性がなく、特に西洋様式家具の味を取り入れた、より高級に見えるためのデザインが中心であった。現代住居にそれが合うはずもなく、新規チャンネルを狙った家具デザインを起こしたくても、既成の問屋中心の流通をないがしろにもできずに、低迷を続けているのが現状であろう。
昨年より、刑務所作業製品のデザイン依頼を受け、受刑者の更生にかかわる商品ということでも大変興味があり、特にやりがいのある仕事として、家具をデザインさせて頂いております。
これまでの刑務所作業製品の家具デザインは、残念ながら国内家具メーカーと同様であり、安価で丈夫という点で優るとはいえ、今後苦戦がしいられそうに思います。しかし、国内家具メーカーのように、既成の問屋流通に縛られることがない点、現代的なデザインの家具を提案しやすく、新たなキャピィックファンを、家具を通じてつくれる可能性が十分あると考えています。
日本の家具デザインは変革を余儀なくされていきます。刑務所作業製品の家具もまさにその時期にきているといえます。その変革の時期にデザインさせて頂けるのは、大変光栄に思っています。
今後、デザイン設計から試作製品へ、製品から商品発表へと進む過程を十分に見つめながら、変革されなければならない家具のデザインを磨いていこうと思います。

スガワラデザイン室 菅原孝則

1997年3月25日 法務省矯正局作業課発行 アプローチvol.14

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